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営業でAIを使う|活用は約6割、それでも効果の実感は議事録に及ばない理由

営業・販売は、日本企業で2番目に生成AIが使われている業務です。ただし効果の実感が最も高いのは議事録・メール作成補助のほう。この差は、営業の仕事のうちAIが代われる部分が限られていることを示しています。どこに使い、どこに使わないかを整理しました。

営業でAIを使う|活用は約6割、それでも効果の実感は議事録に及ばない理由

営業でAIを使うという話は、提案書の作成から顧客の分析まで幅があります。どこから手を付けるかの判断材料です。従業員10〜20名で、営業と事務を兼ねている担当者に向けて書いています。

先に結論

営業の仕事のうち、AIが確実に代われるのは書く作業だけです。訪問後の記録、提案書の下書き、フォローのメール。この3つに絞ると、効果が出ます。代われないのは誰に何を提案するかの判断です。判断の材料になる情報が社内に記録されていない会社では、AIに渡すものがありません。白書の調査で、活用は約6割と2番目に高い一方、効果の実感で最も高いのは議事録・メール作成補助でした。使ってはいるが、効果が出る範囲は限られているという構図が読み取れます。

この記事で扱うこと

統計上、営業・販売がどこに位置しているか。書く作業とそれ以外をどう分けるか。顧客に出す文書で確認が必要になる箇所。記録が無い状態で始めた場合に起きること。この4点です。

統計上の位置

令和8年版情報通信白書の企業向け調査(2025年度)では、業務類型ごとの生成AI活用状況について、日本では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、次に「営業・販売」で約6割、「社内ヘルプデスク」で約5割と続いています。導入効果を実感すると回答した割合については、「議事録・メール作成補助」が約7割となり、他の類型に比べて顕著に高い結果でした。

白書は、日本と他の3か国を比較した場合、日本は全体的に「未導入」や「わからない」と回答する割合が高かったこと、米国や中国では各業務類型において活用率が高く、特に「研究・商品開発」において生成AI導入の効果を実感すると回答した割合が高い傾向が見られたことも記載しています。

使われている業務の内訳を出している調査もあります。SaaS比較サイトを運営するスマートキャンプが、営業でAIツールを使っている担当者389人へ聞いた結果では、最も多い回答が提案資料の作成(197人)、次が営業メールの作成・送付(194人)でした。いずれも書く作業です。成果が向上したと実感している割合は約7割と発表されています。ただし対象がすでにAIを使っている人に限られるため、営業全体の数字としては読めません。

書く作業と、それ以外を分ける

営業の作業AIが代われるか条件
訪問後の記録を文章にする代われる要点を先に3つ書いてから渡す
提案書の下書き代われる構成と入れる数値を人が決めておく
フォローのメール代われる前回の内容を渡す
トークスクリプトの下書き代われる自社の売り物と価格の前提を渡す
見積の作成部分的計算は表計算。文言だけを任せる
商談前の企業リサーチ部分的出典が示される道具を使い、数字は人が確認する
誰に提案するかの選定代われない判断材料が社内に記録されていない
価格の判断代われない自社の原価と方針が前提になる
売上の予測代われない予測に足る件数の履歴が残っていない
断られた理由の解釈代われない書かれていない事情が多い

代われる側の4つに絞ると、1件あたり10〜20分かかっていた作業が数分で終わります。部分的と書いた2つは、計算と数字の確認を人が持つ前提でなら使えます。代われない側へ手を出した場合、出てきた内容を疑いながら読む時間のほうが長くなります。

どの順で手を付けるか

最初に手を付けるのは訪問記録です。形が毎回同じなので、指示のひな形を一度作れば同じ使い方を繰り返せます。次に広げるのはフォローのメールです。前回の記録を渡すだけで、書き出しに悩む時間がなくなります。提案書の下書きは3番目に置いてください。案件ごとに構成が変わるため、何を入れるかを人が決めてから渡す形になり、慣れるまでの負担が大きい作業です。順序を逆にして提案書から始めると、指示の書き方を覚える負担が先に来ます。

顧客に出す文書で確認する箇所

営業の文書は社外に出ます。社内文書とは確認の範囲が変わります。

確認箇所起きうる誤り確認の方法
顧客名・担当者名似た名前の別会社に置き換わる前回のメールと照合する
金額・数量根拠のない数字が入る見積の元データと照合する
納期・期限実際と違う日付が入る社内の予定と照合する
過去の経緯実際にはなかったやり取りが書かれる前回の記録と照合する
約束していない内容できると読める表現が入るできる範囲を人が書き直す

5番目が最も危険です。生成AIには、利用者に過剰に同調してしまうシカファンシーという現象が指摘されています。売りたいという前提で書かせると、できると読める表現が入りやすくなります。確認の方法はAIの回答が正しいかを確認するで扱っています。

記録が無い状態で始めるとどうなるか

記録は、いつ書けなくなるか(3 つの時点を並べた図)

顧客ごとの経緯が個人のメールと記憶にしかない会社は多くあります。その状態でAIに提案を作らせると、一般論の提案書が出てきます。使えるようにするには、渡す材料が必要です。最小の形は、訪問1件につき次の3行です。相手が困っていると言ったことを、相手の言葉のまま残します。こちらが提案したことと、その理由。断られた場合は、その理由として言われたこと。

この3行があると、次回の提案の材料になります。結果だけの記録は、次に使えません。判断の理由を残す考え方はAI-Readyとはで扱っています。

顧客情報を入力してよいか

営業の文書には顧客名が含まれます。外部サービスへ送る構成の場合、この時点で社外へ出ます。

扱い方できること制約
顧客名を伏せて渡す文章の構成や表現の作成経緯を踏まえた提案にはならない
社名を仮名に置き換える提案書の下書き置き換えを忘れる事故が起きる
入力を認めた範囲で渡す経緯を踏まえた作成どこまで認めるかを先に決める必要がある

2番目は事故が起きます。置き換えを人が毎回行う運用は、いずれ抜けます。1番目か3番目のどちらかを選ぶことになります。線引きは生成AIに入力してはいけない情報で扱っています。

効果の測り方

受注件数で測らないようにします。受注は市況や担当者の力量に左右され、AIの効果を切り出せません。

測る対象測り方
訪問から記録までの時間訪問終了から記録が残るまで
提案書の作成にかかった時間着手から社内確認へ回すまで
フォローの実施率訪問後3営業日以内に連絡した件数の割合

3番目が実務では効きます。書く作業が軽くなると、後回しにしていた連絡が実施されるようになります。件数として表れる変化はここです。

この記事で扱っていないこと

顧客の行動データを分析して見込み度を判定する用途は扱っていません。従業員10〜20名の会社では、判定に足る件数のデータが蓄積されていないことが多いためです。売上の予測も、同じ理由で対象外にしました。また、白書の調査は業務類型ごとの活用状況までで、営業のどの作業に使われているかまでは示していません。作業ごとの分け方は、白書の記載ではなく実務上の整理です。

よくあるご質問

提案書をAIに作らせると、他社と同じ内容になりませんか

材料を渡さなければ、そうなります。一般論しか入っていないためです。相手が困っていると言った言葉をそのまま渡すと、内容が変わります。差が出るのは渡す材料の側です。

営業担当者が使ってくれません

訪問記録から始めるのが現実的です。提案書は形が案件ごとに違うため、指示の出し方を覚える負担が出ます。訪問記録は形が同じなので、一度ひな形を作れば毎回同じ使い方になります。

顧客名を入力してよいか、判断できません

利用しているサービスの設定で、入力内容が学習に使われるかを確認します。使われない設定にできる場合と、契約の種類によって変わる場合があります。確認できるまでは、顧客名を伏せて使う運用にできます。

出典

次の訪問の後、3行だけ記録します。相手の言葉、提案した内容と理由、断られたならその理由。この3行が溜まると、AIに渡す材料になります。

記録の形から相談できます。お問い合わせはこちらです。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.08