調査

中小企業のAI導入率は20.4%|「生成AI活用58.1%」との差はどこから来るか

AI導入率として引用される数字は、中小企業で20.4%、23.4%、58.1%と調査ごとに開きます。中小企業基盤整備機構は導入の有無を、東京商工リサーチは会社としての推進を、総務省の情報通信白書は活用方針を聞いた結果です。どの数字がどの設問の答えなのかを整理し、組織的な取組がない27.0%との関係まで示します。

中小企業のAI導入率は20.4%|「生成AI活用58.1%」との差はどこから来るか

中小企業のAI導入率として引用される数字は、20.4%、23.4%、58.1%と調査ごとに大きく開きます。何を導入と数えるか、そして誰に何を聞いたかが違うためです。従業員10〜20名で、社内のAI利用をどう扱うか決めきれていない担当者に向けて書いています。

先に結論

令和8年版情報通信白書の企業向け調査には、生成AIに関する数字が3つ並んでいます。方針を決めた企業が68.9%、何らかの業務で使っている企業が86.4%、組織的な取組が無い企業が27.0%。この3つは別の設問です。重なりを整理すると、日本の企業の姿は「使ってはいるが、組織として扱っていない」に近くなります。中小企業では、その傾向が強く出ています。自社の位置を測るなら、使っているかどうかではなく、止めるとき・広げるときに誰が決めるかが決まっているかを見ます。そこが空欄なら、27.0%の側にいます。

AI導入率という言い方に一つの数字を当てるなら、中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した実態調査の20.4%です。全社的に導入している企業と一部の業務で導入している企業の合計で、検討中の18.6%を加えると39.0%になります。一方、総務省の情報通信白書が示す中小企業58.1%は、導入の有無ではなく生成AIをどう扱うかという方針を聞いた数字でした。混ざりやすいのはここです。

この記事で扱うこと

  • 調査ごとに導入率の数字が違う理由と、それぞれ何を聞いた結果なのか
  • 大企業74.0%と中小企業58.1%の差が、何の差なのか
  • 「組織的な取組はない」27.0%が、他国と比べて何を意味するのか
  • 自社がどこにいるかを、5分で判定する手順

「導入率」は、調査ごとに違う数字になる

同じ時期に公表された3つの調査を並べると、開きの理由が見えてきます。聞いているのが導入の有無なのか、会社としての推進なのか、方針の有無なのかで、対象も母数も変わっています。数字を引くときは、どの調査のどの設問かまで書き添える必要があります。

調査・公表元聞いた内容中小企業の数字調査時期
中小企業基盤整備機構(2026年3月公表)AIを全社的に導入しているか、一部の業務で導入しているか20.4%(検討中18.6%を加えると39.0%)2025年11月17日〜12月12日
東京商工リサーチ(2025年)生成AIツールの業務活用を会社として推進しているか23.4%(大企業は43.3%)2025年7月30日〜8月6日
総務省 令和8年版情報通信白書生成AIを活用する方針があるか58.1%(大企業は74.0%)2025年度調査

総務省・情報通信白書が並べている3つの数字

総務省が令和8年版情報通信白書で公表した企業向けアンケート調査(2025年度)の結果です。順に見ます。

数字何を聞いたか回答の内容
68.9%生成AI活用の方針「積極的に活用する方針である」+「活用する領域を限定して利用する方針である」の合計
86.4%生成AIの業務利用状況自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合(方針を「わからない」と答えた対象を除く)
65.6%組織的な取組状況全社横断・各部署単位・個人業務単位のいずれかで組織的に取り組んでいると回答した割合(「利用を禁止している」と答えた対象を除く)
27.0%組織的な取組状況「組織的な取組はない」と回答した割合

使っているかを聞けば86.4%、方針があるかを聞けば68.9%になります。同じ企業群に対して、聞き方を変えただけで18ポイント動きます。他社の導入率として引用された数字を見たときは、どの設問の答えかを確かめる必要があります。

中小企業58.1%、大企業74.0%の差

方針の設問を企業規模別に見ると、大企業で74.0%、中小企業で58.1%でした。白書は、いずれも前年度(2024年度調査)に比べて上昇し、特に中小企業において大きな上昇が見られたとしています。

全体としては、前年度の49.7%から68.9%へ上がっています。1年で19.2ポイントの上昇です。ただし白書は、今回調査した他の3か国(米国、ドイツ及び中国)に比べると、日本は引き続き低い結果となった、とも書いています。上がったが、差は残っている、という位置づけです。

27.0%という数字が意味していること

組織的な取組の設問で「組織的な取組はない」と答えた割合は27.0%でした。白書はこれを約3割とし、米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高いと評価しています。さらに、企業規模別に見るとこの回答割合は中小企業で特に高い傾向がある、としています。

使っている企業が86.4%、組織的に取り組んでいる企業が65.6%。この差の部分にいるのが、個人が判断して使っているだけの状態です。

状態見分け方起きやすいこと
個人が使っているだけ誰が何に使っているかを、担当者が把握していない入力してよい情報の線引きが人によって違う
部署単位で取り組んでいる対象業務と手順が、部署の中で共有されている部署をまたぐと同じ検討をやり直す
全社で取り組んでいるやめる条件と広げる条件が、決裁として決まっている止める判断が遅れにくい

取組が進まない理由として挙がるのは、ツールではなく情報

中小企業基盤整備機構の実態調査は、社内の理解度と情報量も聞いています。IT・AIの必要性への理解があると答えた企業は45.1%ある一方、成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できているという項目では、当てはまらない側の合計が83.3%でした。適切なベンダーや製品を選定する情報の不足も79.8%に達しています。

必要な公的支援を聞いた設問では、導入費用などの助成が77.9%で最も高く、次に導入事例などの情報提供が70.5%で続きました。足りないものとして挙がっているのは、ツールそのものより、どこで何に使えるのかという判断材料です。組織的な取組が無いという回答の背景には、この空白があると読めます。

リスク対策は「指針の整備」に寄っている

白書は、セキュリティリスクや法的・倫理的問題、その他不適切な利用を防ぐための取組状況についても聞いています。日本で最も高かったのは「全社的な指針やガイドラインを整備している」で41.1%でした。

一方で他の3か国では、「製品・サービスの企画・導入段階で、専門的な審査体制がある」や「製品・サービス導入後、定期的な評価・検証が行われている」と回答した割合が日本より高い傾向があった、と記載されています。

白書はこの差の背景として、他の3か国では議事録・メール作成補助等の企業内で完結する利用にとどまらず、顧客向けの製品・サービスに生成AIを活用することが積極的に行われており、それに伴って事前の審査や事後の評価・検証を行う体制が整備されつつあると考えられる、としています。

つまり、日本の「ルールは作った、確認はしていない」という形は、用途が社内に閉じていることの結果でもあると読めます。用途が社外へ出た時点で、この形では足りなくなります。

どの業務で使われているか

業務類型ごとの活用状況では、日本は「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、次に「営業・販売」で約6割、「社内ヘルプデスク」で約5割と続きます。

導入効果を実感すると回答した割合も、「議事録・メール作成補助」が約7割で、他の類型に比べて顕著に高い結果でした。

使われている用途と、効果が実感されている用途が一致しています。最初の1業務を選ぶときは、この一致している領域から入るのが、統計上は外れにくい選び方になります。

効果の捉え方が、他国と違う

生成AIの活用により生じうる影響を聞いた設問では、日本は「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も高く、「製品・サービスの質の向上」(32.2%)や「人員不足の解消」(26.8%)を大きく上回りました。

他の3か国では「製品・サービスの質の向上」が最も高く、次に「作業時間の短縮などによる業務の効率化」、「技術継承やノウハウ共有の円滑化などによる従業員の専門的な経験・能力不足の緩和」と続きます。

日本ではAIが効率化の道具として捉えられている、という差です。中小企業にとって効率化は切実な課題なので、この捉え方が誤りというわけではありません。ただし効率化だけを見ていると、空いた時間の行き先を決めないまま次の業務で埋めてしまうことになります。

国内の別調査でも、効率化に寄っている

同じ傾向は、中小企業だけを対象にした調査にも出ています。中小企業基盤整備機構の実態調査では、AIの導入目的として業務効率化・作業時間の短縮を挙げた企業が87.0%で、2位の品質向上32.3%と50ポイント以上の差がつきました。導入効果の側でも、業務効率化・作業時間の短縮が83.2%で突出しています。

ただし同じ調査には、効率化以外の読み方も残っています。付加価値創出に効果があったという回答は、AIで22.3%、従来のITツールで7.4%と約15ポイント開いており、AIのほうが高い評価を得ました。効率化の指標だけを見ていると、この差は集計から落ちます。売上が増えている企業ほど品質向上を導入目的に挙げていた点(増収傾向38.6%、減収傾向26.4%)も、同じ方向を指しています。

自社の位置を5分で判定する

次の4問に答えます。「はい」が2つ以下なら、白書でいう組織的な取組が無い側に近い状態です。

問い確認する場所
社内で誰がどのAIツールを使っているか、一覧になっているか台帳、または契約の一覧
入力してよい情報と、してはいけない情報が文書になっているか社内規程、掲示、共有フォルダ
うまくいかなかったときに、やめる判断を誰がするか決まっているか決裁の記録
1業務でうまくいったとき、他へ広げる判断を誰がするか決まっているか決裁の記録

台帳の作り方はAIツールの管理台帳で、入力の線引きは生成AIに入力してはいけない情報で扱っています。

この数字の限界

この数字から読み取れることと、読み取れないこと(内側 3 項目・外側 3 項目の範囲図)

この調査は日本・米国・ドイツ・中国の企業を対象にしたアンケートで、回答は自己申告です。「積極的に活用する方針である」と答えた企業が、実際に活用できているかまでは分かりません。

また、中小企業という区分の中には、従業員数300名の企業も10名の企業も含まれます。従業員10〜20名の会社の実態が、58.1%という数字にそのまま表れているとは限りません。

使えるのは、設問ごとに数字が大きく動くという事実と、使用と組織的な取組の間に差があるという構図までです。効率化で止まったまま先へ進めない状態については効率化で止まる会社と、そうでない会社をご覧ください。

よくあるご質問

導入率として引用するなら、どの数字ですか

AIを導入したかどうかを示すなら、中小企業基盤整備機構の20.4%です。生成AIを何らかの業務で使っているかどうかなら、情報通信白書の86.4%になります。ただし後者は、活用方針の設問で「わからない」と回答した対象を除いた上での割合です。母数が全企業ではない点まで書かないと、実態より高く見えます。

1年で19.2ポイント上がったのは、なぜですか

白書は上昇の理由を特定していません。読み取れるのは、上昇したことと、他の3か国との差が残っていることまでです。理由を推測して自社の判断材料にすると、根拠のない前提が入ります。

うちは使っていませんが、遅れていますか

統計上は少数側です。ただしこの調査は、使っていない理由を業種や業務内容まで分けて示していません。手作業の割合が低い業務構成であれば、使わない判断が合理的な場合もあります。判断材料は、他社の割合ではなく自社の業務の中です。

AIの導入率と、生成AIの導入率は同じ数字ですか

別の数字です。中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入した企業のうち生成AIを利用しているのが82.6%で、次に多い音声認識・音声対話AIの29.8%を大きく上回りました。つまりAI導入率20.4%の中身は生成AIが大半を占めますが、20.4%そのものは生成AIだけの導入率ではありません。

出典

情報通信白書の各図表の出典は、総務省(2026)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」です。中小企業基盤整備機構の調査は東京商工リサーチへの業務委託により実施されていますが、二つの調査は設問も回答企業も別で、数字をそのまま足したり引いたりはできません。

上の4問に答えます。答えが出ない問いがあれば、そこが自社の空欄です。まずやめる判断を誰がするかを1行で決めておくと、次の検討が早くなります。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.01