実務ガイド

定型業務の自動化|自動化しない業務の見分け方と、手段と費用の選び分け

自動化の検討は「何を買うか」から始まりがちですが、先に決めるべきは「そもそも自動化するか」です。やめられる業務、例外が多い業務、正誤を判定できない業務は対象から外します。そのうえで、設定変更・表計算・RPA・AIの4つを、やめるときの手間まで含めて比べます。

定型業務の自動化|自動化しない業務の見分け方と、手段と費用の選び分け

毎月同じ手順で繰り返している作業を、自動化できないか考えている。従業員10〜20名、専任のIT担当がいない会社の担当者に向けて書いています。

結論

自動化の可否は、頻度ではなく例外の割合で決まります。例外が3割を超える業務を自動化すると、自動処理と手作業の二重管理になり、着手前より手間が増えます。検討の順序は、やめられないか、例外は3割未満か、間違いに気付ける人がいるか。この3つを通ってから手段を選びます。手段は今あるツールの設定から順に見て、AIは最後です。

そして作る前に、やめるときの手間と、担当者が辞めた後に誰が直すかを決めます。ここを決めていない自動化は、数か月後に「止まっているが誰も触れないもの」になります。

定型業務とは何か。できる、と、やったほうがよい、は別

定型業務とは、手順と判断基準が事前に決まっていて、同じ入力なら誰がやっても同じ結果になる作業を指します。請求書の作成や経費精算の入力のように、迷う場面がなく、正解が一つに定まるものです。対する非定型業務は、毎回状況を見て判断が要る作業で、値引きの可否やクレームへの返信のように、同じ入力でも相手や経緯によって答えが変わります。自動化の検討対象になるのは前者だけで、後者を無理に対象へ入れると、判断のたびに人が呼び戻されます。

作業の例定型か理由
請求書の作成と送付定型発行の条件と様式が決まっており、同じ取引なら誰が作っても同じ内容になる
経費精算の入力と照合定型規程に照らして金額と証憑を突き合わせるだけで、判断の余地がほとんどない
値引きの可否判断非定型取引先との関係や在庫の状況を見て、その都度の判断が要る
クレームへの返信文の作成非定型相手の状況と経緯によって、書くべき内容が毎回変わる

手順が決まっていて毎回同じ操作をするなら、技術的には自動化できます。ただし自動化には、作る手間のほかに4つの負担が後から発生します。

  • 対象のシステムが更新されると止まる。原因を調べる人が要る
  • 自動処理から外れたものを、誰かが手で拾う
  • 中身を知らない人が触れるように、説明を用意する
  • 自動でやった結果が正しいかを、定期的に確かめる

この4つを引き受けられないうちは、着手を先送りしたほうが安全です。作った直後は楽になり、半年後に元より重くなる、という結末が典型的です。

対象から外す4つの業務

外す条件見分け方代わりにやること
そもそもやめられるその作業の結果を、誰も見ていない3か月止めて、誰も困らなければ廃止する
例外が3割を超える「基本はこうだが、この場合は違う」が多い例外を減らす。減らせるまで自動化しない
年に数回しかない作る手間を回収できない手順書だけ作る
間違いに気付けない自動処理の結果の正誤を、誰も判定できない確認できる形にしてから着手する

1つ目は検討から抜け落ちやすい項目です。長く続いている作業ほど、なぜやっているかが分からなくなりがちです。自動化するとその作業は「今後も続ける」と決めたことになり、やめる機会をひとつ失います。

2つ目の例外は、感覚ではなく数えて判断します。「たまにある」と言われた例外が、実際には3件に1件だったことがあります。業務そのものを減らす・やめるという判断の全体像は中小企業の業務改善は何から始めるかで扱っています。

候補になりやすい業務と、最初に確認する手段

上の4条件を通った業務のうち、少人数の会社で候補に挙がりやすいものを並べます。並び順に優劣はつけていません。自社の作業がどれに近いかを確かめるための一覧で、右の列は、新しい道具を買う前に最初に開く場所を示しています。ここで足りるなら、それ以上の検討は要りません。

業務最初に確認する手段
請求書・納品書の発行と送付会計ソフトの定期発行機能
経費精算・給与計算の入力給与ソフトの取込機能
売上データの集計と転記表計算の関数
定型メール・案内の一斉送信グループウェアの一括送信
紙の帳票の読み取りとシステム入力AI-OCR

どの業務でも順序は同じで、まず手元にある機能を見て、足りない分だけを外の道具で埋めます。会計ソフトやグループウェアの標準機能で用が足りるなら、そこで検討は終わりです。紙の帳票の読み取りだけは手元の機能では届かないことが多く、その場合の進め方はAI-OCRの導入手順にまとめています。

手段は4つ。AIは最後に検討する

自動化すると決めた後、手段を選びます。多くの解説はRPAかAIから始まりますが、実務では上の2つで済むことが少なくありません。

手段向いている場面やめるときに起きること
今使っているツールの設定(会計ソフト・グループウェアの自動処理機能)同じソフトの中で完結する作業設定を戻すだけ。元の手作業に戻せる
表計算の関数・入力規則・マクロ(Excel VBA、Google Apps Script)転記、集計、様式の統一ファイルを開けば中身が見える。手で直せる
RPA(デスクトップ型・クラウド型)複数のソフトをまたぐ操作契約を切ると動かなくなり、手順の記録も失う
AI・AI-OCR要約・分類・下書きなど、答えが一つに決まらない作業業務は戻せるが、任せていた判断の基準が残らない

上から順に検討します。請求書の発行、定型メールの送信、集計表の作成は、多くの場合すでに契約している会計ソフトやグループウェアの機能で実現できます。新しく何かを買う前に、手元のツールのマニュアルを確認する価値があります。

3つ目のRPAは注意が必要です。RPAは人がやっていた手順をツールの中に閉じ込めるため、解約すると手順を知る人がいない状態で手作業に戻ることになります。自動化した内容をツールの外に文章で残しておけば、この事態は避けられます。A4で1枚あれば足ります。

AIを表の最後に置いたのは、AIが劣るからではありません。答えが一つに決まる作業には過剰だからです。AIを使うかどうかの判断軸はAIに向いている業務の見分け方にまとめています。

公開されている価格の実例

費用の水準が分からないままでは、手元の機能で済ませるか道具を買うかの判断がつきません。ここでは提供元の公式ページで確認できた金額だけを並べます。他社の解説記事にある「月額数千円から」といった相場感は、算出の条件が公開されていないため使っていません。

手段公開されている価格条件
表計算の関数・マクロ追加費用なしExcel・Google スプレッドシートに標準搭載
無料から使えるRPA月額0円・初期費用0円マクロマン ベーシック。利用人数・実行回数・期間の制限なし
有償のRPA・自動化基盤2,248円/ユーザー/月〜Power Automate Premium。年間請求・消費税別。ボット単位は22,488円/ボット/月
導入支援込みのパック1,116,000円〜/年税抜。納品書または請求書50枚/月の想定価格

上の金額は相場ではなく、各社が公開している価格の実例です。いずれも2026年9月5日に提供元の公式ページで確認しました。出典はマクロマンの料金ページPower Automate の価格ページリコー 定型業務自動化パックです。価格は改定されるため、契約前に各社の価格ページで条件をご確認ください。手段の優劣を示すものではなく、同じ作業でも選び方で費用の桁が変わることを示すために並べています。

公的な調査で確認できること

総務省が全国の自治体を対象に行った調査があります。母集団は47都道府県と1,741市区町村で、中小企業の調査ではありません。ただし対象となっている業務は入力・転記・照合といった事務作業で、中小企業のバックオフィスと重なります。

RPAの導入効果として挙げられているのは、住所異動データの入力で年間4,000時間(40.0%)、証明書発行の入力で年間2,400時間(66.7%)、マイナンバー発行情報の入力で年間604.6時間(40%)の削減です。並んでいるのは入力と転記で、判断を伴う業務は入っていません。自動化候補を考えるとき、この偏りは参考になります。

同じ調査で、導入に向けた課題の1位は「取り組むための人材がいない又は不足している」でした。AIについて826件、RPAについて1,026件です(3つ以内の複数回答、件数であり割合ではありません)。費用ではなく人が制約になっている、という結果です。

出典: 総務省「自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)」PDF 18ページ・12ページ・10ページ(令和8年4月24日版/確認日 2026年9月1日)。調査結果の公表ページもあります。

作った人が辞めた後、誰が直すか

作った仕組みは、いつ直せなくなるか(3 つの時点を並べた図)

少人数の会社では、自動化はたいてい一人が担当します。その人が異動・退職すると、動いているものの中身が分からなくなります。止まっても直せず、かといって止めると業務が回りません。上の調査で課題の1位が人材だったことと、同じ問題です。

着手前に3つ決めておけば、この事態は避けられます。中身を書いた文書をどこに置くか(共有フォルダの決まった場所。個人PCに置かない)。二人目に誰が見るか。動かなくなったら誰に言うか。

二人目については、同じことができる人を用意する必要はありません。少人数の会社では現実的でないからです。置き場所と連絡先を知っている人がもう一人いれば、止まったときに動けます。

やめる基準を先に決める

作ったものをいつやめるか。これを先に決めておくと、動かなくなったときの判断が速くなります。作った経緯があると、後からはやめにくくなるものです。

状況考えられること判断
3か月で2回以上止まった対象システムの更新が多い、または例外が想定より多い手作業に戻して原因を整理する
直すたびに外部への依頼が要る自社で保守できない構成になっている費用を計算し直す。手作業のほうが安い場合がある
結果を結局は全件確認している確認の手間が削減分を超えている確認を減らせないなら、やめる
業務そのものが変わった自動化した前提が失われた作り直す前に、その業務が要るかを再検討する

3つ目はよく起きます。自動でやった結果を全件チェックしているなら、その自動化は工数を増やしています。

最初の1つを選ぶ

候補が複数あるときは、やめられないか、例外が3割未満か、間違いに気付けるか、今のツールの設定で済まないか、の順に絞り、残ったものの中で最も発生回数が多いものを選びます。

頻度を最後に置いているのは意図的です。頻度が高くても例外が多い業務を自動化すると失敗します。多くの解説が頻度から入るのは、判定が簡単だからにすぎません。

対象業務の洗い出しがまだなら、業務棚卸し表の作り方で記録を作るところからになります。効果の測り方は業務改善のKPIの決め方にまとめています。帳票の読み取りを対象にする場合の順序は、AI-OCRの導入手順をご覧ください。会議の記録を対象にする場合の判断は、議事録をAIで作るで扱っています。自分たちで作ったアプリを畳むときの順序はノーコードで作った業務アプリの畳み方にあります。

対象が1つに決まったら、着手の順序は次のとおりです。上の絞り込みは「どれをやるか」を決めるためのもので、こちらは決まった後に何から手を付けるかを示しています。順番を入れ替えて先に作り始めると、効果を比べる材料も、やめるときの合図も残らないまま動くものだけができます。

順序やること
1. 数える直近3か月の発生回数と、例外の件数
2. 決める自動処理の結果の正誤を判定する人
3. 試す1業務だけを、手元の機能で
4. 記録する中身を書いた文書の置き場所と、動かなくなったときの連絡先
5. 期限を切るやめる基準に達したかを見る日付

よくあるご質問

RPAとAI、どちらから始めるべきか

どちらでもありません。今使っているツールの設定と、表計算の機能で済まないかを先に確認します。請求書の発行や定型メールの送信は、契約中の会計ソフトやグループウェアの機能で実現できることが多くあります。買わずに済めば、やめるときの手間もかかりません。

例外だけ手作業にすればよいのでは

それが二重管理です。自動処理と手作業の両方を維持することになり、どちらに何が入っているかを追う手間が増えます。例外が3割を超える場合は、まず例外を減らす取り組みが先になります。例外が減らせないなら、その業務は自動化に向いていません。

効果はどう測るか

削減時間だけでは測れません。自動化後に発生する確認・例外処理・保守の時間を差し引いた分が実際の効果です。着手前に、その業務にかかっている時間と発生回数を記録しておかないと、後から比較する対象がなくなります。

担当者が一人しかいない場合

進めて構いませんが、中身を書いた文書の置き場所と、動かなくなったときの連絡先を、必ずもう一人に伝えておきます。同じ作業ができる人を二人用意する必要はありません。場所と連絡先を知っている人がもう一人いれば、止まったときに動けます。

外部に作ってもらう場合の確認事項

作った内容の説明書を納品物に含めてもらいます。何を、どの順で、どんな条件で処理しているかが書かれたものです。あわせて、動かなくなったときの連絡先と対応範囲、契約が終わった後にその処理がどうなるかを、契約前に確認します。

マクロとRPAはどう使い分けるか

処理が表計算の中で完結するならマクロ、別のソフトをまたぐ時点でRPAの検討に入る、というのが境界です。Excel VBA や Google Apps Script はファイルを開けば中身が読め、追加の契約も要りません。会計ソフトの画面を操作してから別の管理表へ書き写す、といった複数のソフトにまたがる作業は表計算の外へ出るため、RPAの領域になります。またぐ相手が1つだけなら、両方のソフトに連携機能が無いかを先に確かめてください。

非定型業務は自動化できないのか

判断そのものを任せることはできませんが、判断に必要な材料を集める部分だけを切り出せば対象になります。値引きの可否を決めるのは人でも、過去の取引履歴と在庫の状況を一枚にまとめるところまでは手順が決まっており、機械に任せられます。業務を丸ごと自動化するか諦めるかの二択にせず、判断の前と後ろを分けて考える方法はAIに渡す単位を、狭く切りすぎていないかで扱っています。

配布資料

この記事の判定を、そのまま書き込める様式にしたものを用意しています。業務名・発生回数・例外の件数・正誤を判定する人・選んだ手段・やめる基準を1行で管理する表です。資料の一覧から入手できます。

例外の割合が3割前後で判断がつかない場合、直近3か月の実績を数えるのが確実です。感覚で「たまに」と言われている業務ほど、数えると想定と違います。

手段の比較や、買わずに済む範囲の見極めについては、現在お使いのツールを前提に整理できます。お問い合わせからご連絡ください。

判断の材料が足りないと感じた場合は、お問い合わせからご相談いただけます。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.01