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議事録をAIで作る|最も使われている用途で、それでも失敗する3つの型

議事録・メール作成補助は、日本企業で最も使われている生成AIの用途です。効果を実感した割合も約7割で最多。それでも社内で定着しないことがあります。原因は精度ではなく、録音の可否、決定事項の判別、確認者の不在にあります。製品を選ぶ前に見る項目もあわせて整理しました。

議事録をAIで作る|最も使われている用途で、それでも失敗する3つの型

議事録の作成は、生成AIで最初に試される業務です。統計上もいちばん使われている用途です。それでも止まる場合、原因はだいたい決まったものです。従業員10〜20名で、会議の記録を担当している人に向けて書いています。

先に結論

この用途は、統計上いちばん外れにくい選択です。令和8年版情報通信白書によると、日本企業で「議事録・メール作成補助」での活用を回答した割合は約7割で最も高く、導入効果を実感すると回答した割合も約7割で、他の類型に比べて顕著に高い結果でした。それでも止まるのは、次の3点が決まっていないためです。録音してよいか、決定事項をどう見分けるか、誰が確認するか。いずれもAIの性能とは関係ありません。始める前に決めるのは1つです。議事録に何を書くのかを、先に3項目まで決めます。決めずに要約させると、毎回違う形の文書が出てきます。

議事録AIは、3つの処理を束ねたものです

製品ごとに呼び方は違いますが、中で動いている処理は録音・文字起こし・要約の3つに分かれます。音声を文字にする処理と、その文字を議事録の形へ整える処理は別物で、精度の話が噛み合わなくなるのは、たいていこの2つを混ぜて語るときです。さらに、誰が話したかを推定する話者分離という処理が別に乗ります。単なる文字起こしツールとの違いは、後ろの2つを持っているかどうか、と考えると整理がつきます。

この記事で扱うこと

この用途が統計上どう位置づけられるか。止まる3つの型と、その見分け方。始める前に決める3項目。確認にかかる時間の見積もり。この4点です。

統計上の位置

令和8年版情報通信白書の企業向け調査(2025年度)から、業務類型ごとの活用状況です。

業務類型日本での活用状況効果の実感
議事録・メール作成補助約7割(最多)約7割(他の類型より顕著に高い)
営業・販売約6割(白書に個別の記載なし)
社内ヘルプデスク約5割(白書に個別の記載なし)

使われている用途と、効果が実感されている用途が一致しているのはこの類型だけです。最初の1業務を選ぶ根拠としては、これで十分です。

止まる型1|録音してよいかが決まっていない

どこで止まっているか(議事録が回らない原因は、3つのどれか で 3 つに分かれる図)

文字起こしを使う場合、会議を録音することになります。ここで止まる会社が出てきます。

確認すること決めておく内容
社外の人が参加する会議録音することを冒頭で伝えるか、伝えずに議事メモだけにするか
録音データの置き場所どこに保存し、いつ消すか
文字起こしの送信先端末内で処理するか、外部サービスへ送るか
人事・評価に関わる会議対象にするかどうか

外部サービスへ送る構成の場合、会議の内容がそのまま社外へ出ます。顧客名や見積の金額が含まれる会議は、入力してよい情報の線引きに直接ぶつかります。その線引きは生成AIに入力してはいけない情報で扱っています。録音を避ける場合は、会議中に人が箇条書きでメモを取り、そのメモを整形させる形になります。この形なら文字起こしは不要です。

録音の通知は、製品の側から出ることがある

伝えるかどうかを社内で決める前に、使っている製品の既定の挙動を確かめてください。Zoom は録画を開始した時点で、アプリの参加者には画面上の確認を、電話で参加している人には音声の案内を必ず流します。100ライセンス未満のプランでは、この通知を無効にすることもカスタマイズすることもできません(Zoom の公式ヘルプ)。

Microsoft Teams の既定は通知のバナーだけで、参加者へ明示的な同意は求めません。管理者が参加者の同意を必須にする設定を有効にすると、発言やカメラをオンにする際に可否を聞かれ、断った人は閲覧だけになります(Teams の公式ドキュメント)。いずれも機能上の挙動であり、法律上どうすべきかとは別の話です。確認日は2026-09-04です。

止まる型2|決定事項と検討中が混ざる

要約させると、決まったことと検討しただけのことが同じ文体で並びます。読んだ人が、決定として受け取ってしまいます。会議の発言には「その方向でいいと思う」「一度持ち帰る」「やってみましょうか」のように、決定かどうかが曖昧な言い方が多く含まれます。AIはこの曖昧さを、そのまま曖昧に残すか、決定として書くかのどちらかになります。

対処やり方効果
書式を先に決める決定事項・保留・次回までの宿題の3区分にするAIが区分に振り分ける形になる
会議中に言い切る「これは決定でよいですか」と口頭で確認する録音にも記録にも残る
決定事項だけ人が書くAIには経緯の要約だけを任せる最も確実。手間は数分

止まる型3|確認する人が決まっていない

生成AIの出力には誤りが含まれます。議事録の場合、誤りの多くは発言者の取り違え言っていないことの補完です。会議に出ていない人が確認しても、誤りは見つかりません。確認できるのは会議に出ていた人だけです。ところが、その人は次の業務に移っています。

現実的な形は、作成者が出席者の1人であることです。作成を出席していない人に任せると、確認の工程が成立しません。確認の総量については人とAIの役割分担で扱っています。

発言者の取り違えは、なぜ起きるか

誰がどこを話したかを推定する処理は、文字を起こす処理とは別に動いています。話者分離と呼ばれる機能で、製品によって前提が違います。Google Cloud の文字起こしは、予想される話者数を設定する必要があると公式ドキュメントに明記しました。一方 Microsoft の高速文字起こしでは、話者数の指定は任意で、2から35の範囲をヒントとして渡す形です(公式ドキュメント)。会議の人数を先に伝える必要があるかどうかは、選ぶ前に見る項目になります。

Web会議なら参加者ごとに音声が分かれる、というのは既定では成り立ちません。Zoom のクラウド録画は通常ひとつに混ざった音声で、参加者ごとにファイルを分ける設定は既定で無効です。有効にするにはアカウント側の設定に加えて、開発者向けの連携申請が要ります。分かれていない音声から話者を推定している以上、重なった発言や似た声で取り違えが起きるのは避けられません。

対面はもっと重い条件が付きます。Microsoft Teams で同じ部屋にいる複数人を個別に識別するには、対応する会議室デバイスと、それに応じた有償ライセンスが要ります。会議室デバイスを使う場合は Teams Rooms Pro、持ち込み機器で行う場合は主催者側が Teams Premium もしくは Copilot のライセンスを持っていることが条件です。そのうえで参加者それぞれが事前に自分の声を登録しておく必要があります(Teams の公式ドキュメント)。登録の上限は50人で、室内は10人までが推奨とされています。日本語も対応言語に含まれます。条件が揃っていなければ、話者は番号で区切られるだけになります。

ここから導ける判断は単純です。誰が言ったかを正確に残したい会議ほど、事前の準備が要ります。逆に、決定事項と宿題だけを残せばよい会議なら、話者の精度は追わなくて構いません。自社の会議がどちらなのかを決めるほうが、製品を比べるより先です。

始める前に決める3項目

議事録に何を書くか。決定事項・保留・宿題の3区分にするなら、そう決めます。録音するかどうか。する場合は、送信先と保存期間を決める。誰が確認するか。会議の出席者から1人を決めておきます。

この3つを決めたうえで、いつも同じ形の指示文を使います。毎回違う書き方をすると、出てくる議事録の形も毎回変わります。指示文の残し方は社内で使う指示文をどう残すかで扱っています。

製品を選ぶときに見る項目

決めるより先に製品を見に行くと、機能の多さで選んでしまいがちです。上の3つが決まっていれば、見るべき項目は5つに絞れます。どれも会議の中身そのものではなく、社内の決めごととぶつかるかどうかを確かめる項目になっています。

見る項目何を確かめるか
無料枠の上限月の合計と1回あたりの上限が、別々に決まっていることがある。Notta は無料プランを月120分・1回3分までと公式の料金ページで公表している(Notta の料金ページ、2026-09-08確認)
入力した音声の扱いLINE WORKS AiNote は、フリープランで録音した音声を自社の音声認識・自然言語処理の性能向上に利用する場合があると明記し、有料プランは「学習利用なし」と公表している(LINE WORKS AiNote の公式ページ、2026-09-08確認)
話者を分ける方式話者数を先に指定する必要があるか、参加者の声を事前に登録する必要があるか。止まる型3で挙げた条件
会議の形Web会議へ連携させるのか、対面の会議室で機器1台から録るのか
記録の置き場所保存先と保存期間が、止まる型1で決めた内容と食い違っていないか

無料枠の数値は各社が自社の判断で変えるため、比較をうたう他社の記事に載っている値をそのまま信じないでください。上の2件も、確認した日にそれぞれの提供元が公式ページへ書いていた記載です。業務で使い続けるつもりなら、金額より先に音声の扱いを読むほうが、後になって効いてきます。

無料プランをもう少し詳しく比較したい場合は議事録AIを無料で使うで、対面の会議で使えるかどうかも含めて整理しています。

確認にかかる時間

効果を測るときは、作成時間だけを見ないようにします。

工程手作業の場合AIを使う場合
会議中のメモ必要録音する場合は不要
文章化30〜60分数分
確認と修正軽い(自分で書いたため)全文を読み直す必要がある
合計で見たときの短縮確認の時間を含めて測る

短縮したように見えて、確認の負担が別の人へ移っているだけのことがあります。測るのは、会議が終わってから議事録が配られるまでの時間です。作成時間ではありません。測り方は業務改善のKPIで扱っています。

この用途に向かない会議

人事・評価に関する会議は、録音そのものが適切でない場合があります。参加者が多く発言が重なる会議は、話者の判別が難しくなる。専門用語や社内の略称が多い会議は、表記が揺れます。対応表を先に作ると改善する場合があります。

議事録以外の用途を探す段階ではAIを使わない理由の最多は「活用する業務がイメージできない」が、候補の出し方を扱っています。

よくあるご質問

文字起こしの精度は、どのくらい必要ですか

議事録の場合、全文の精度は必要ありません。必要なのは決定事項が正しく残ることです。精度を上げる努力より、決定事項を会議中に口頭で確認するほうが、確実で早くなります。

社外の人が参加する会議で、録音を伝えるべきですか

伝える運用にしておくほうが、後から問題になりません。伝えない場合や、相手から断られた場合の進め方は議事録AIの注意点で整理しています。この判断は会社の方針として先に決めておく項目です。

議事録の作成をやめる基準はありますか

確認と修正に、手で書いた場合と同じかそれ以上の時間がかかっている場合です。その状態は、書式が決まっていないか、会議の内容がこの用途に向いていないかのどちらかを示しています。

出典

  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節 生成AIの業務利用状況 2026年9月1日確認
  • Notta「料金プラン」無料プランの上限 2026年9月8日確認
  • ワークスモバイルジャパン「LINE WORKS AiNote」プラン別のデータ学習利用 2026年9月8日確認

次の会議で、決定事項を口頭で言い切ります。「これは決定でよいですか」と確認するだけです。この一言があると、AIで作っても手で書いても、議事録の質が変わります。

録音の可否や書式の決め方から相談できます。お問い合わせはこちらです。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.08