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効率化しても仕事が増えるのはなぜか|削減できた時間の行き先を公的事例13社で読んだ

作業が速くなったのに忙しさが変わらないとき、原因は4つに分かれます。この記事は、空いた時間の行き先を決めていない場合を中心に、公的な事例集の従業員50人以下13社を読んで整理したものです。休暇になった会社と業務量に向かった会社はありましたが、誰がどう決めたかを書いた事例は見当たりませんでした。

効率化しても仕事が増えるのはなぜか|削減できた時間の行き先を公的事例13社で読んだ

業務改善で作業時間が減ったとします。空いた時間は、どこへ行くでしょうか。この記事は、公的な事例集に記録された従業員50人以下の13社を読み、削減後の時間がどう扱われているかを整理したものです。従業員10〜20名の事務系の会社に向けて書いています。

効率化しても仕事が増えるのはなぜか

作業は速くなったのに忙しさが変わらない、という状態には別々の原因が混じっています。原因は次の4つに分けられ、手当てをする場所もそこで変わります。手順を組み直せば消えるものもあれば、誰かが配分を決めない限り残り続けます。

仕事が増えたと感じる理由実際に起きていること
空いた時間の行き先を決めていない減った分がそのまま別の作業で埋まり、担当者の負荷は動かない
手前の工程だけが速くなる確認や承認の工程へ件数が移り、下流の担当者の処理量が増える
前の手順が残ったまま新しい手順が増える二重に記録する状態が続き、置き換えたはずの作業が消えない
見えていなかった作業が表に出る進捗や台帳が可視化され、記入と更新という新しい作業が生まれる

この記事が中心に扱うのは1つ目です。仕事は与えられた時間をすべて使うように膨らむ、という古くからの指摘(パーキンソンの法則)と同じ形で、行き先を決めなければ空いた時間は自動的に埋まっていきます。2つ目は記事の後半で扱います。3つ目と4つ目は道具と手順の設計に属する話で、AIを入れたのに使われない業務可視化のやり方にまとめました。

空いた時間の行き先を決めずに改善を進めると、その時間はほぼ自動的に別の仕事で埋まっていきます。担当者から見れば、仕事の量が変わらないまま手順だけ変わったことになります。そうなると、次に効率化できる余地を見つけても、担当者はそれを言い出しません。言えば自分の仕事が増えるからです。一度目の改善は号令で進みますが、二度目からは現場が持っている情報が出てこなくなります。したがって決めておくべきなのは、削減率の目標ではなく、削減できた分をどこへ向けるかです。公的事例を読むと、成果を出している会社はこれを先に決めています。

公的事例は「削減の後」をどう書いているか

13社のうち、削減後の時間の行き先に触れている記述があったのは6社でした。内容は分かれます。

企業(規模・業種)削減後の時間がどこへ行ったか
株式会社ティル(11名・デザイン)社員と家族の誕生日を休暇にする制度を創設。出社割合を約3割に
城善建設株式会社(40人・建設)残業が激減し繁忙期も定時退社。同時に現場訪問数が1日3か所から5〜6か所へ
有限会社イヴニングスター(3人・Web制作)「可処分時間の創出」を共通目標として社内で共有。年間約252時間
株式会社高梨製作所(17人・製造)深夜勤務を廃止、残業削減、有給取得を促進。機械は24時間稼働へ
株式会社ケイリーパートナーズ(23人・事務代行)1日2時間から働ける体制。平均勤務時間は約4時間
株式会社今野製作所(37名・製造)「確認するストレスが減った」「休暇をとる人がいても代役がしやすい」

出典は各社の掲載ページです。ティル・今野製作所は東京商工会議所のデジタル化支援事例(掲載日の記載なし)、城善建設・イヴニングスター・高梨製作所・ケイリーパートナーズはJ-Net21「中小企業とDX」(中小機構)です。いずれも確認日は2026年9月1日です。

休暇に向かった会社と、業務量に向かった会社

削減できた時間は、どこへ行くか(改善に着手する前、行き先を決めていたか で 3 つに分かれる図)

同じ「時間が空いた」でも、向かった先は2通りに分かれています。ティルは制度にしました。社員と家族の誕生日を休暇にする、という形です。イヴニングスターは「可処分時間の創出」という言葉を目標として社内で共有しています。どちらも、空いた時間が従業員側に残ることを先に決めた形です。

城善建設は両方が併記されています。残業が激減して定時退社ができるようになった一方で、現場訪問数は1日3か所から5〜6か所へ増えました。減った時間の一部は休息へ、一部は業務量へ向かっています。高梨製作所も似た構造です。人の深夜勤務を廃止する一方で、機械は24時間稼働になりました。人の拘束を減らし、稼働は増やす、という配分です。どちらが正しいという話ではありません。決めているかどうかが分かれ目です。

数値が出ている事例ほど、行き先が書かれていない

残りの7社を見ると、逆の傾向が出ます。

企業(規模)記載されている成果時間の行き先
芝園開発株式会社(38名)官公需の売上割合 22%→69%、売上高 約4.7倍削減時間の記述自体がない
株式会社ホープン(41名)膨大な残業時間が大幅に削減、人件費削減を実現行き先の記載なし。数値もなし
株式会社金陽社印刷所(7人)売上回復・受注拡大時間に関する記載なし
株式会社ソロン(26人)重複入力が解消、リアルタイム閲覧が可能に削減時間・生産性の数値とも記載なし

会社側の指標(売上、受注、人件費)が並ぶ事例では、時間の行き先が書かれていません。書く必要が生じていない、とも読めます。

13社に見当たらなかったこと

行き先を書いた事例は6社ありました。しかしその配分を誰がどう決めたのかを書いた事例は、13社の中に見当たりませんでした。休暇制度を作ったのは誰の判断か。訪問数を増やすと決めたのは誰か。従業員側から要望が出たのか、経営側が先に決めたのか。いずれも記載がありません。これは事例集の書き手の問題ではなく、公表される事例が成果の報告として整理されるためだと考えられます。決め方は成果ではないため、記録に残りません。

検証できない場では何が語られているか

ここから先は未検証の情報です。個人の発信であり、企業名も規模も確かめられません。公的事例と同じ確度のものとしては扱えない、という前提です。

そのうえで、公的事例に出てこない論点が語られている場があります。効率化のやり方を社内に共有したところ、空いた時間に別の仕事が入るだけで待遇も評価も変わらず、以後は共有をやめた、という趣旨の記録です。これに対して、生産性を上げても処遇が変わらないなら続かない、という趣旨の反応が集まっていました。

同じ構造は生成AIより前からある、という指摘もあります。表計算のマクロを個人で抱えていた時期と同型だ、というものです。また、身につけた技能を社外で通用するものとしてだけ持ち、社内には出さない、という行動を述べる発信もあります。

件数や割合は示しません。取得できた範囲が母集団を代表しないためです。ここで言えるのは、そうした声が存在するという観察だけです。

支援する側と、担当する側で語られる内容が違う

当編集部が調査した範囲では、次の非対称がありました。

立場定着しない理由として挙げられるもの
支援する側の記事・公的事例共有の仕組みがない、教育が足りない、経営の関与が弱い
担当者側・匿名の発信上記に加えて、処遇に反映されない

処遇を理由に挙げる記述は、調査した範囲では匿名の場に偏っていました。ただしこれは調査範囲での傾向であり、全体を代表するものではありません。母数を取れないため、割合としては示せません。

行き先が下流に振り替わる場合

配分は、休暇か業務量かの二択とは限りません。工程をまたいで移ることがあります。

作成の工程だけが速くなり、確認や承認の工程が変わらない場合、作成側で空いた時間は確認側の負荷になります。同じ人数で処理する件数が増えるためです。会社全体では改善していますが、確認を担当する人から見れば仕事が増えています。

この構図は、承認の工程を持つ業務で起こります。見積、請求、契約、採用など、最後に誰かが目を通す業務です。

確認すること見るところ
どの工程が速くなるか作成、確認、承認のどれか
その先の工程の担当は誰か名前を挙げる
その人の処理件数が増えるか月あたりの件数を導入前と比べる
増えるなら、何を減らすか確認の対象を絞る、基準を決めて一部を省く

改善の効果を作成側の削減時間だけで測ると、この振り替わりは見えません。確認を担う側の時間も一緒に測る必要があります。

確認の工程を増やさない設計はAIと人の役割分担で扱っています。

賞与に結び付けた会社の規模

配分の決め方に踏み込んだ公的な記述が、1件だけありました。株式会社後藤組です。毎月1つ以上のアプリを全員が作る運用を、賞与への反映によって定着させた、と記載されています。

ただし従業員150名で、この記事の読者の7〜15倍の規模です。同じ制度を運用できる人員の前提が違います。手順として提示できるものではありません。

参考になるのは、この会社でも導入当初に「ただでさえ忙しいのに必要性を感じない」という不満があったこと、組織のフラット化に際して営業の幹部社員が反発して退職したことが記載されている点です。規模が大きくても、同じところでつまずいています。

出典: J-Net21「中小企業とDX」(中小機構/2026年2月9日掲載/確認日 2026年9月1日)

よくあるご質問

削減できた時間の行き先は、誰が決めるべきですか

経営者です。休暇に回すか、他の業務へ振り向けるかは処遇に関わる判断で、担当者の権限を超えます。着手前に一文で決めておくと、改善した人が損をする状態を避けられます。

休暇に回すと、業務量は減らないのではないですか

業務量は減りません。減るのは、その業務にかかる時間です。休暇に回した会社は、空いた時間を新しい業務で埋めない、という選択をしたことになります。どちらが正しいかではなく、決めずに始めると自動的に業務量へ吸収される、という点が問題です。

事例に書かれていない、というだけで問題と言えますか

断定はできません。書かれていないのは、事例の目的が導入の成果を示すことにあり、その後の処遇まで扱っていないためとも考えられます。ただし従業員50人以下の13社で1件も見当たらない以上、読み手が「削減の後」を事例から学べる状態にはなっていません。

効率化しても仕事が増えるのを防ぐには、何をすればよいですか

着手する前に、空いた時間をどこへ向けるかを一文で決めておきます。あわせて、速くなる工程のすぐ次に誰がいるかを確かめ、その人の月あたりの処理件数が増えないかを見ます。この2つを先に済ませておくと、担当者から見て「言えば自分の仕事が増える」という状態になりません。

13社を読んだ範囲では、配分の決め方に手本はありませんでした。したがって自社で決めるほかありません。決めることは1つです。

この改善で時間が空いたら、それを何に使うか。休暇にするのか、残業を減らすのか、別の業務に充てるのか。着手前に一文で書き、担当者に伝えておきます。

別の業務に充てると決めるなら、それを隠さないほうが結果的に続きます。伝えないまま業務が増えると、二度目の情報が出てこなくなります。

改善の対象を選ぶ段階は中小企業の業務改善は何から始めるか、効果の測り方は業務改善のKPIの決め方で扱っています。事例が自社に当てはまるかの判定は中小企業のDX事例は自社に当てはまるかにまとめています。

自社の状況に当てはめる段階で判断がつかない場合は、お問い合わせからご連絡ください。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.01