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属人化をわざと作る人がいるとき|責める前に、評価と制度の側を見る

特定の担当者が情報を出さず、その人しか処理できない状態が続く。意図的に抱えているように見えることがあります。ただし引き継いだ後に本人が得るものがなければ、抱え込みは不合理な行動ではありません。残してよい属人化との分け方と、引き継ぎを求める前に決める2つを整理しました。

属人化をわざと作る人がいるとき|責める前に、評価と制度の側を見る

特定の担当者が手順を書き出さず、質問しても要領を得ない。その人しか処理できない状態が何年も続いている。意図的に抱えているように見える場面があります。この記事では、原因を個人の姿勢に求める前に確認することを扱います。

結論|抱え込みは、多くの場合そこにある仕組みへの反応

自分しかできない業務を手放したとき、その人に何が起きるかを考えると、抱え込みは不合理な行動ではありません。引き継いだ後に評価や処遇が上がる経路がなければ、手放す理由が本人の側に存在しないためです。逆に、抱えている間だけは代えがきかない人として扱われます。

抱え込みを性格の問題として扱うと、打てる手が説得だけになり、同じことが次の担当者でも起きます。動かせるのは、引き継いだ人が損をしない形に変えるところです。

残してよい属人化と、残せない属人化

属人化をすべてなくす前提で始めると、対象が広がって手が回らなくなります。分ける基準は、その人が不在の日に会社の外へ影響が出るかどうかです。

区分あてはまる業務の例扱い
資格や免許が要る有資格者しか行えない手続き残す。代わりを立てる話ではない
判断の質が結果を左右する見積もりの条件詰め、顧客との調整残す。ただし判断の材料は共有する
手順が決まっている入力、照合、定型の連絡、月次の集計残せない。着手するのはここから

引き継ぎの対象になるのは、3つ目だけです。1つ目と2つ目まで標準化しようとすると、現場から見て的外れな要求になり、協力そのものが得られなくなります。どこまでを対象に含めるかの切り分けは属人化を解消する業務棚卸しの進め方で扱っています。

判断の質が結果を左右する業務でも、判断そのものは渡せない一方、判断に使った材料なら共有できます。どの条件を見て、何を根拠に決めたのかを1件ずつ残していく形です。材料さえ残っていれば、本人が不在のときに同じ結論を再現できなくても、いま進めるか保留にするかは別の人が決められます。

わざと抱えているように見えて、別の理由がある場合

外から見える状態が同じでも、理由が違えば効く手当ても変わります。抱え込みと受け取られている状態の背景には、次のようなものが混ざっています。

  • 教える時間が、業務時間として認められていない
  • 引き継いだ後も、問い合わせだけは元の担当者へ来る
  • 手順を書き出すと業務量が少なく見え、立場が弱くなることを恐れている

3つ目は口に出されにくい理由です。過去の棚卸しの結果が人員の見直しへ使われた経験が社内にあると、次からは誰も正確な内容を出しません。書き出した本人が不利になる使い方を一度でもすると、その後の棚卸しは形だけのものになります。

このうちどれにあたるかは、本人へ直接尋ねても出てきにくい部分です。過去に引き継ぎを求めたとき何が返ってきたか、棚卸しの結果を何へ使ったか、教える時間をどの枠で扱ってきたか。会社側に残っている記録を並べるほうが、当てはまる理由へ早く届きます。

教える時間に、制度が付いていない

厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」によると、計画的なOJTを正社員に対して実施した事業所は61.1%、正社員以外に対して実施した事業所は27.1%でした。実施そのものは半数を超えています。

一方で、時間を確保するための制度は広がっていません。教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%、教育訓練短時間勤務制度は6.2%、教育訓練所定外労働時間免除制度は6.1%で、いずれも前回調査から低下しました。教育訓練費用を支出した企業は54.9%です。

つまり教える行為の多くは、通常業務の合間に置かれています。この条件のまま引き継ぎを求めると、本人の持ち出しで対応させる形になります。抱え込みを責める前に確認できるのは、教えるための時間がどこから出ることになっているか、という一点です。

制度が無いこと自体は、その会社の落ち度とは限りません。教育訓練休暇を導入していない企業が9割を超えるという数字は、制度の整備へ人手を割ける会社が限られている状況を表しています。ただし制度が無い前提のまま引き継ぎだけを求めれば、実行する側には時間の出どころがありません。

引き継ぎを求める前に決める2つ

ひとつは、引き継いだ後の問い合わせをどこで受けるかです。窓口を変えないまま手順だけを渡すと、質問は元の担当者へ届き続けます。本人の負担は減らず、引き継いだ側も自分で判断する機会を持てません。

もうひとつは、引き継ぎに使った時間をどこへ計上するかです。通常業務の外側に置いたままにすると、忙しい月に真っ先に消えます。この2つは法令上の要求ではなく、運用上の設計にあたります。手順の書き方そのものは業務標準化の進め方にまとめています。

最初に渡す1つの選び方

対象を決めた後、どれから渡すかで進み方が変わります。選ぶ基準は、発生の頻度が高く、判断がほとんど入らないものです。月に一度しか起きない業務から始めると、次の実施まで確認の機会がなく、渡せたのかどうか分からないまま止まります。

頻度の高い業務なら、渡した結果がその週のうちに出ます。うまくいかなかった場合も、原因がまだ双方の記憶に残っています。件数が多いぶん、渡した側の負担も目に見えて減るため、次へ進む理由がその場で生まれます。

逆に、最初から難しいものを渡すと、引き継ぎという取り組み自体が失敗として扱われます。一度失敗した引き継ぎは、二度目の提案が通りにくくなり、抱え込みを正当化する材料にも使われます。

本人がいなくなる日から逆算する

在籍しているうちにしか取れないもの(3 つの時点を並べた図)

退職や異動の連絡を受けてから動くと、残された期間で取れるものしか取れません。外部の取引先との関係や、契約に紐づく経緯のように、本人が在籍しているうちにしか取れない情報があります。

抱え込みが解けていない状態のまま人が抜けると、残るのは業務そのものではなく、外部に対して交わした約束だけです。契約先や保守の引き継ぎで渡すものの一覧はシステム保守の引き継ぎで扱っています。休めない担当者が現にいる場合の短期の手当ては属人化で休めないのほうが近い内容です。

出典

分け方の相談から

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.14