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全員に配ったAIツールを、1人分へ戻す|使われていない契約の縮め方

全社へ配ったAIツールが2人しか使っていない状態は、進め方の失敗ではなく契約と実態のずれです。使っている人数、使われている業務、月額、更新日の4つを並べ、配布停止から契約の縮小まで3段階で戻す手順を整理しました。

全員に配ったAIツールを、1人分へ戻す|使われていない契約の縮め方

全員分のアカウントを契約したものの、実際に使っているのは1〜2名。この状態は珍しくありません。この記事は、従業員10〜20名で全社へ配布済みの会社に向けたものです。どう広げるかではなく、どう縮めるかを扱います。

配ったものを回収すると、失敗を認めることになると考えて手が止まります。実際に起きているのは、契約が実態より広いという、ただのずれです。ずれを直す作業に、成功も失敗もありません。縮めた後で、残した1人分が費用に見合っているかを確かめる工程が要ります。その測り方はAI導入の費用対効果をどう測るかにまとめてあります。

縮めた後に残すのは、1つの業務と1人の担当です。この形なら、使っている人の手元では何も変わりません。変わるのは月額と、管理する対象の数です。

判断を先延ばしにすると、次の更新日で自動的に同じ人数分が更新されます。年間契約の場合、決めるべき時期は更新日の1〜2か月前です。

4つの数字を並べる

先に「使われていない」の線を引いておきます。ここでは、残したい業務のなかで週に1回以上その人が実際に使っている状態を使われている、月に数回思い出したときだけ触る状態を使われていないとして扱います。週1回を境にするのは、それより間隔が空くと使い方を思い出す作業から始まることになり、業務の一部として数えられなくなるためです。外部に決まった基準があるわけではないので、社内で線を決めておけば足ります。

縮めるかどうかは、印象では決まりません。次の4つを1枚に書き出すと決まります。

調べること調べ方見るところ
使っている人数管理画面の利用状況、または直近1か月の心当たりを人ごとに確認配布した人数との差
使われている業務使っている人に、何に使ったかを3つまで挙げてもらう業務名が挙がるか、「試している」で終わるか
月額と内訳請求書の明細。人数単位か、機能単位か使っていない人の分がいくらか
次の更新日契約書または管理画面。年払いなら解約の締切も残り日数と、解約の申し出期限

2つ目の答え方で状態が分かります。業務名が挙がる場合、その業務に絞れば残せます。「試している」「便利そう」で終わる場合、業務に着いていません。この段階なら、止めても失われるものは何もない。

管理画面に利用状況が出ないツールもあります。その場合は人に聞く形になりますが、聞き方に注意が必要です。「使っていますか」と聞くと、使っていない人も使っていると答えます。「先週、何に使いましたか」のほうが実態が出ます。

利用状況が管理画面に出ない場合

契約しているプランによっては、誰がいつ使ったかを管理画面で確認できません。その場合でも、社内に残るものから手がかりが取れます。見るのは3つです。まず出力物。そのツールで作った文書や表が共有の場所に置かれているか。置かれていなければ、業務には着いていません。次に指示文。同じ形の指示を繰り返し使っている人は業務として使っており、毎回書き下している人はまだ試している段階です。

3つめは質問の有無です。使い方の質問が来ていない状態は、使われていないことを示す場合があります。実際に使っていれば、必ずどこかで引っかかるからです。静かなことを順調と読み替えないでください。

3つ目は判断を誤りやすい項目です。質問が来ないことには、社内で解決している場合と、使っていない場合の両方があります。1つ目と組み合わせて見れば、どちらなのか判別できます。

利用状況が見えるプランへ変えて確かめる方法もありますが、確かめるために費用を上げる形になります。3つの手がかりで足りる場合は、そこで判断します。点検の周期そのものはAI活用の定期点検で扱っています。

戻し方の3段階

縮める順序と、費用が動く時点(3 つの時点を並べた図)

戻し方は3段階に分けます。第一段階は新しい配布を止めること。すでに持っている人はそのままにします。ここで月額は変わりませんが、増える方向は止まります。第二段階は利用者を絞ることで、使っている人だけを残し、それ以外のアカウントを止めます。多くのツールは、いったん止めても同じ人へ後から戻せます。

第三段階が契約そのものを縮める作業です。次の更新日に合わせて人数またはプランを下げます。年払いには締切があるため、動く前に日付を確認しておきます。

2段階目で、止める人へ何と伝えるかが問題になります。「使っていないので止めます」と伝えると、能力の話に聞こえます。「いま1つの業務に絞って試す段階に戻します」と、範囲の話として伝える形が実務的です。

3段階目まで進める前に、アカウントを止めた人のデータがどうなるかを確認します。その人が作った指示文や履歴が、アカウントの停止と一緒に消える場合があります。消える前に、使えるものは共有の場所へ移します。指示文の残し方は社内で使う指示文をどう残すかで扱っています。

誰が決めるか

範囲を縮める判断は、担当者にはできません。費用と契約に関わるためです。担当者が決められるのは、どの業務に絞るかまでです。経営者が決める部分は3つあります。契約を縮めるかどうか、いつの更新日で実行するか、縮めた後も残す業務を何にするか。この3つを決めずに担当者へ「見直しておいて」と渡すと、止まります。担当者には契約を変える権限がないからです。

判断の材料が足りない場合、決めること自体を先送りにできます。ただし先送りにするのは判断だけで、いつまでに決めるかは先に決めます。更新日までの残り日数を確認し、その日付を後ろに置きます。決める日を決めずに保留すると、更新日を過ぎて自動的に同じ人数分が更新されます。

推進の役割をどう置くかはAI推進体制の作り方で扱っています。

残す1業務の選び方

縮めた後に残す業務は、成果が大きいものではありません。毎週必ず発生し、やり直しがきき、出来上がりの良し悪しを本人が判断できる業務です。毎週発生することが条件になるのは、間隔が空くと使い方を忘れるためです。月に1度の業務では、毎回思い出す作業から始まります。

残す業務が決まらない場合、縮める前に業務側を見る順番になります。どの業務が候補になるかはAIに向いている業務の見分け方で扱っています。残すと決めた業務は、口頭ではなく1行書き残します。書いていないと、数か月後に何のために契約しているのかが分からなくなり、同じ検討をもう一度やることになります。

段階的に広げるという説明は、部署がいくつもある会社を前提にしています。1部署で試してから隣へ広げる形です。従業員15名の会社では、部署が2つか3つしかありません。1部署で試すと、それはほぼ全社です。段階を作るには、部署ではなく業務で区切ることになります。

業務で区切ると、同じ人が「この業務では使う、あの業務では使わない」という状態になります。これは中途半端ではなく、少人数で段階を作る唯一の方法です。人ではなく業務にアカウントが着いていると考えると、範囲の管理がしやすくなります。

また広げるときの条件

縮めることを決めるとき、広げ直す条件も一緒に決めておきます。条件がないと、広げる判断が最初と同じ「何となく必要そうだから」に戻ります。また広げてよいのは、次の3つが揃ったときです。残した1業務で毎週使われている状態が2か月続いていること。これは法令や規格で定められた期間ではなく、業務の周期に合わせて前後させる目安です。そして、その業務の担当者から別の業務でも使いたいという申し出が出ていること。使う側から出てくることが条件で、こちらが勧めて出てきたものは含めません。

3つめは、広げる先の業務が決まっていることです。人ではなく業務を先に決めます。「あの人にも配ろう」から始めると、最初と同じ状態に戻ります。実際の目印になるのは2つ目です。使っている本人が別の用途を思いつく状態は、その人の中で使い方が固まったことを示します。この段階なら、次の1人へ渡しても止まりにくくなります。

広げるときに増えるのは、アカウントの数だけではありません。入力してよい情報の線引きを、新しく使う人にも伝える必要があります。線引きは生成AIに入力してはいけない情報で扱っています。

配っただけでは使われない、という前提

令和8年版情報通信白書は、汎用的なAIツールが導入されても一部の積極的な社員が活用するのみで、全社的な活用と効果創出に至らない可能性もある、と記載しています。全員に配ったのに使われていない状態は、例外ではありません。

同じ白書の調査では、生成AI活用による業務変革等について「組織的な取組はない」と答えた企業の割合が日本で27.0%あり、企業規模別に見るとこの割合は中小企業で特に高い傾向が示されています(総務省「令和8年版 情報通信白書」組織的な取組状況、2026年9月8日確認)。配ったところで止まっている会社は、統計の上でも3割近くある。この数字が示すのは進め方の巧拙ではなく、そこが多くの会社の出発点だということです。

そのうえで白書は、先進企業が活用環境の整備で終わらせず、活用事例の収集や社内展開、定期的なワークショップ開催などの促進策を実施することで会社全体への浸透を実現している、としています。つまり縮めるか広げるかの前に、促進策を打ったかどうかという段階が挟まる。打っていないなら、縮めてから1業務でやり直すほうが早く済みます。縮小の判断を失敗の段階として位置づける見方は、中小企業のDX失敗事例にまとめました。

白書はその一例として、部門ごとに対象業務を選び、指示文のひな形を作って効果を測る取組を少しずつ社内へ広げた結果、社内の生成AI利用率が7割を超えたという日清食品グループの取組を挙げています(総務省「令和8年版 情報通信白書」AI導入・活用による効果創出のステップ、2026年9月8日確認)。順序が逆でないことに注意してください。対象の業務を決めてから広げており、先に全員へ配ってから使い道を探したわけではありません。なぜ使われないのかという原因の側は、生成AIが社内に浸透しない状態を5つに分けるで扱っています。

出典

よくあるご質問

縮めると、社内の意欲が下がりませんか

使っていない人の意欲は、配布によって上がっていません。下がる可能性があるのは、使っている1〜2名のほうです。その人たちのアカウントを残し、残す業務を本人と決めれば、影響は出にくくなります。範囲を縮めることと、使っている人の使い方を制限することは別です。

また全員へ広げたくなった場合、戻せますか

多くのツールは人数を後から増やせます。ただし、年払いで割引を受けている契約では、途中の増減に条件が付く場合があります。縮める前に、増やすときの条件も一緒に確認しておいてください。後の判断が軽くなります。

無料の範囲へ落とす方法もありますか

あります。ただし無料の範囲では、入力した内容の扱いが有料プランと違うことがある点に注意してください。学習に使われるかどうか、履歴が残るかどうかが変わることがあるため、業務で使い続けるなら、その条件を先に確認する必要があります。

使われていないことを、経営者へどう報告すればよいですか

4つの数字をそのまま出す形が通りやすくなります。配布人数と使用人数、月額のうち使われていない分、次の更新日です。原因の説明を先に置くと、担当者の責任の話になります。数字を先に置けば、契約の話に変わります。

更新日を1つ調べる

いま契約しているツールの次の更新日と、解約の申し出期限を調べます。この2つの日付が分かると、いつまでに決めればよいかが決まります。調べた結果、期限が近い場合の判断は急ぎます。過ぎると1年分が確定するためです。お問い合わせから契約の状況をお知らせいただければ、縮める順番を一緒に確認できます。

ここまでの整理を踏まえて、無料診断で現在の段階を確認できます。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.08