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業務改善のKPIの決め方|4指標の測り方と、削減時間を金額に直す計算式

KPIツリーは作りません。KGI・KSF・KPIの関係を整理したうえで、時間・品質・待ち・ミスの4指標を1枚の記録票で2週間測る手順と、削減時間を金額に直す計算式をまとめました。待ち時間の測り方と、ミスを件数ではなく発見工程で測る方法が中心です。

業務改善のKPIの決め方|4指標の測り方と、削減時間を金額に直す計算式

この記事は、業務改善の効果を数字で説明したい中小企業の経営者と管理部門に向けたものです。KPIの解説記事は、KGIからKSF、KPIへと分解するツリー構造の作り方が中心です。経営企画部があり、目標管理制度が動いている組織では有効ですが、10〜20名の会社には重すぎます。この記事では、階層構造を作らず、1つの業務について4つの指標を2週間測る方法を扱います。重点を置くのは「待ち時間」と「ミスの発見工程」です。どちらも作業時間の集計には出てこないため、短縮したはずなのに現場が楽になっていない、という食い違いの原因になります。

結論

業務改善のKPIに、階層構造もダッシュボードも必要ありません。1業務について、時間・品質・待ち・ミスの4つを、8列の記録票で2週間測る。これで改善の判断はできます。とくに待ち時間と、ミスの発見工程。この2つは多くの解説記事が扱っていませんが、改善の対象を決めるうえで最も効きます。作業を速くするか、承認を減らすか。答えはここに出ます。

KPIツリーは中小企業には重い

KGI・KSF・KPIの関係

KPIという語が単独で出てくることは少なく、たいていはKGIとKSFの3点セットで説明されます。順に、たどり着きたい成果、そこへ届くために外せない条件、その条件が満たされているかを日々の数字で見る指標、という関係です。この記事で扱う4つの指標は、いちばん下のKPIにあたります。

用語この記事での意味
KGI(重要目標達成指標)最終的に届きたい成果。請求書処理の所要日数を今より短くする、といった到達点
KSF(重要成功要因)その成果へ届くために外せない条件。承認の段数や様式の複雑さなど、成果を左右する要素
KPI(重要業績評価指標)条件が満たされているかを測る数字。この記事の時間・品質・待ち・ミスの4指標がこれにあたる

全社の目標を分解し、部門ごとに指標を割り当て、ダッシュボードで可視化する。この形が機能するのは、部門が分かれ、目標管理の仕組みがすでにある組織です。10〜20名の会社で必要なのは、「この作業、前より速くなったのか」に答えられることだけです。そのために階層構造は要りません。1業務あたり4つの数字があれば足ります。

指標測るものこの指標がないと分からないこと
時間1回あたりの作業時間そもそも速くなったか
品質手戻りと修正の発生速くなった代わりに雑になっていないか
待ち工程間で止まっている時間全体の所要日数が変わったか
ミス誤りの件数と、どこで見つかったかリスクが増えていないか

このうち時間と品質は、多くの解説記事で扱われています。一方で待ちとミスは、事務・管理部門の業務についてはほとんど書かれていません。以下ではこの2つを中心に説明します。

待ち時間の測り方

作業時間の合計が30分なのに、依頼から完了まで3日かかっている。この差はすべて待ち時間です。作業を速くしても、待ちが変わらなければ所要日数は変わりません。

3種類の待ちを分けて記録する

待ちの種類内容記録の方法
手待ち自分が着手できるのに他の作業をしている依頼を受けた時刻と、着手した時刻を記録する
承認待ち上長や他部門の確認を待っている依頼を出した時刻と、返ってきた時刻を記録する
相手待ち取引先や顧客からの返信を待っている同上。相手先も記録しておく

3つを分けるのは、対処がまったく違うためです。手待ちは仕事の順序の問題、承認待ちは承認の段数と権限の問題、相手待ちは自社では動かせない部分です。合算すると、どこに手を打てばよいか分からなくなります。

記録するのは2つの時刻だけ

待ち時間そのものを測ろうとすると続きません。記録するのは「渡した時刻」と「返ってきた時刻」の2点だけです。差が待ち時間になります。分単位である必要はありません。日付と、午前・午後の別で十分です。承認待ちが3日あるかどうかが分かればよく、それが2日と18時間なのか3日と2時間なのかは判断を変えません。

最長値も記録する

平均だけを見ません。承認待ちの平均が半日でも、最長が5日あるなら、その5日が納期遅れの原因です。平均と最長の両方を記録し、最長が発生した条件(月末、承認者の出張中など)も書き添えます。

ミスは件数ではなく「発見工程」で測る

ミスの件数だけを数えても、リスクの大きさは分かりません。同じ1件でも、自分で気づいた誤りと、取引先から指摘された誤りでは意味がまったく違います。

発見工程を4段階で記録する

発見工程内容1件あたりの重み
自分で気づいた作業中または見直しで発見小。手戻りの時間のみ
社内の確認で見つかった上長や別担当のチェックで発見中。確認者の時間も発生
社外に出た後で気づいた送付後に自社で発見大。訂正と連絡が必要
相手から指摘された取引先や顧客からの指摘最大。信用に影響する

件数が同じでも、下の段に寄っているほど状態は悪くなっています。改善後に件数が減っていても、発見工程が下へ下がっていれば、その改善は失敗です。件数だけを見ていると、この変化を見逃します。

手戻りの時間も記録する

1件ごとに、訂正にかかった時間を記録します。誤りの件数が半分になっても、1件あたりの手戻り時間が3倍になっていれば、負担は増えています。件数と時間はセットで見ます。

発見工程を下げないための確認箇所

発見工程を記録すると、どこに確認を入れるべきかが見えてきます。誤りが社外で見つかっているなら、社内の確認工程が機能していないということです。

発見工程の分布示していること打つ手
自分で気づくが大半健全。確認の追加は不要現状維持
社内の確認で多く見つかる作業側に原因がある様式や手順を見直す。確認は減らさない
社外に出た後が多い社内の確認が機能していない確認する人と、確認する項目を明示する
相手からの指摘が続く確認そのものが行われていない送付前の確認を必須の工程にする

2行目と3行目で対処が正反対になる点に注意します。社内で見つかっているのは確認が効いている証拠であり、確認を減らしてはいけません。減らすべきは作業側の誤りの発生源です。

記録票は1枚

測定用の道具は、A4の紙1枚か、表計算ソフトの1シートで足ります。列は次の8つです。

記入例
日付8/24
依頼を受けた時刻10:00
着手した時刻14:00
作業時間25分
渡した相手と時刻課長 14:30
返ってきた時刻翌9:00
手戻りの有無と時間あり 10分
誤りをどこで見つけたか社内の確認

1件あたりの記入は30秒程度です。これ以上列を増やしません。記入に1分を超えると、数日で書かれなくなります。期間は2週間です。件数が少ない業務なら1か月に延ばしますが、それ以上は延ばしません。長く測るほど精度は上がりますが、その間に改善そのものへの関心が薄れます。

業務別の当てはめ方

4つの指標は、そのままの言葉では自社の業務に当てはまりません。業務ごとに、何を時間と呼び、何を待ちと数えるのかを先に決めておきます。事務・管理部門でよく出る4つの業務について、読み替えの例を挙げます。記録票の列は変えず、列の中身だけを業務に合わせて言い換える形です。

業務時間品質待ちミス
請求書処理1件の起票から支払データを作るまでの作業分数金額や支払先を直した件数承認へ回してから戻るまでの時間誤りを自分・社内・社外・相手のどこで見つけたか
月次決算締めから数字が確定するまでの所要日数確定後に修正した仕訳の件数承認や資料の提出が止まっている日数誤りが試算表の段階で見つかったか、その後か
採用応募の受領から合否連絡までの日数連絡内容の訂正や再送の件数面接日程の返信を待っている日数条件の記載誤りをどの工程で見つけたか
問い合わせ対応一次回答を作るまでの分数同じ件で再度問い合わせが来た件数他部門への確認が返ってくるまでの時間誤った回答をどの段階で気づいたか

2週間後に何をするか

測って終わりにする例が多くあります。記録票が埋まった時点では、まだ何も分かっていません。集計は30分で終わります。次の順で見ます。

見る順序計算すること分かること
1作業時間の合計と、依頼から完了までの合計差が待ち時間。どちらを縮めるべきか
2待ち時間を3種類に分けて合計手待ち・承認待ち・相手待ちのどれが大きいか
3手戻りの件数と、その合計時間品質の問題がどれくらいの負担か
4誤りの発見工程の内訳確認が効いているか、抜けているか
5最長値を確認(時間・待ち・手戻り)平均では見えない例外の存在

1番目で差が大きければ、作業の効率化に手を付けても所要日数は変わりません。この1点を確認しないまま改善に着手すると、労力の大半が無駄になります。5番目も省略しません。平均が30分でも、最長が半日の日があるなら、その日に何が起きたかを確認する価値があります。例外の条件が分かれば、そこだけを対象にした改善ができます。

集計した2週間ぶんの数字が、この業務のベースラインです。改善前の実測値という意味で、目標値はこれを起点に置きます。他社が示す改善率の目安は借りません。何割減らせるかは、業務の内容と件数で決まります。目標は「承認待ちの平均を1.5日から半日へ」のように、ベースラインからの下げ幅で書きます。改善前の測定を省けないのは、この起点が作れなくなるからです。

集計から改善案を作る

集計結果検討する改善
承認待ちが最大承認の段数を減らす。代理承認者を決める。金額の基準を見直す
手待ちが最大着手の順序を決める。依頼が届く時刻をそろえる
相手待ちが最大依頼の出し方を変える。締切を明示する。自社では動かせない場合は想定に組み込む
作業時間が最大手順を見直す。様式を簡素化する。ここで初めてツールを検討する
手戻りが最大誤りが起きる工程を特定する。入力の様式を直す

4行目に注目します。ツールの検討は、作業時間が最大だった場合にだけ意味を持ちます。承認待ちが原因の業務にツールを入れても、待ち時間は変わりません。

削減時間を金額に直す

時間で出した結果は、そのままでは投資の判断材料になりません。ツールの購入や外注を検討する場面では、削減できた時間を金額へ直したうえで、支払う額と並べる必要があります。使う式は次の3つで、いずれも記録票の集計値から計算できます。

求めるもの計算式
コスト削減額削減時間(時間)× 時間単価(円)
回収率(削減額 – 投資額)÷ 投資額
回収月数投資額 ÷ 月あたりの削減額

時間単価は、自社の給与実額を人数と労働時間で割った数字を使うのが基本です。手元に数字がない場合の公的な目安として、厚生労働省の毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報では、一般労働者の現金給与総額が400,312円(第1表 月間現金給与額)、総実労働時間が152.8時間(第2表 月間実労働時間及び出勤日数)でした。数値は同ページから配布されている統計表で確認できます(確認日2026-09-06)。割ると1時間あたり約2,620円になります。ただしこれは給与だけの数字で、社会保険料の事業主負担は含みません。実際の負担はこれより大きくなります。

測定コストが効果を超えないために

測るために専用のツールを導入する、全社で一斉に記録を始める、毎日集計する。いずれも測定コストが効果を上回る典型例です。次の3点を守ります。測るのは1業務だけです。全業務を同時に測りません。記録は紙か表計算ソフトで足ります。ツールは買いません。集計は期間の終わりに1回だけにします。測定は改善のための準備であって、改善そのものではありません。準備に時間をかけすぎると、本体に手が回らなくなります。

やめた業務の成果をどう測るか

業務そのものを廃止した場合、削減率の分母がなくなります。この扱いを先に決めておかないと、最も効果の大きかった改善だけが数字に残りません。

廃止した業務については、次のように記録します。

廃止前の月間時間、つまり頻度と1回の所要時間の積を、そのまま削減時間として計上します。廃止した日付と、廃止の判断をした人を記録に残す。廃止によって困ったことが起きたかどうかは、3か月後に確認します。

3番目を省略しません。廃止の成果は、困ったことが起きなかったという事実によって確定します。3か月何も起きなければ、その業務は本当に不要でした。この記録が、次に別の業務を廃止するときの根拠になります。

改善の型として「やめる」を最初に検討する理由は属人化を解消する業務棚卸しの進め方とあわせて確認します。

指標の定義を1行で書いておく

測定を始める前に、4指標それぞれについて「何をどう数えるか」を1行で書きます。書いていないと、測る人によって数え方が変わり、改善前後の比較が成立しません。

指標定義の書き方の例
時間依頼を受けて着手してから、成果物を渡すまで。中断した時間は含めない
品質渡した後に修正が必要になった件数。誤字の指摘も1件と数える
待ち渡した時刻から返ってきた時刻まで。営業時間外は含めない
ミス誤りが見つかった件数と、見つかった工程。同じ書類の複数箇所は1件と数える

定義は完璧である必要はありません。改善前と改善後で同じ定義を使うことが重要です。途中で数え方を変えると、その時点で比較できなくなります。

「営業時間外は含めない」のような細かい取り決めも書いておきます。金曜の夕方に渡して月曜の朝に返ってきた場合を、3日と数えるか半日と数えるかで、結論が変わります。

数字を人事評価に使わない

測った数字を使ってよい範囲(内側 3 項目・外側 3 項目の範囲図)

測定した数字を評価に紐付けると、記録の正確さが落ちます。作業時間は短めに、ミスは少なめに書かれるようになり、改善の判断ができなくなります。

測定を始める前に、「この記録は業務改善のためだけに使い、人事評価には使わない」と明示します。口頭ではなく、記録票の冒頭に書きます。

これは法令上の要求ではなく、運用上の判断です。法令上の要求ではなく、正確な数字を得るための運用上の判断です。一度でも評価に使えば、以降の測定は機能しません。

満足度や負担感といった定性の項目は、4つの指標とは別の扱いにします。記録票の余白へ「月末が重い」「確認の往復が多い」のように一言で書き、点数化も集計もしません。点数にすると比較できる形になり、評価へ転用されやすくなります。数値にしないまま言葉で残しておくほうが、原因を探す手がかりとしては役に立ちます。

AI導入の費用対効果を測る場合は、指標の立て方が少し変わります。詳しくはAI導入の費用対効果をどう測る?を参照してください。

公的統計での測り方との対応は中小企業の生産性向上で扱っています。

効率化の次を測る必要がある、という指摘

情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公表した調査のポイントでは、国内企業においてDXが普及しAI導入も広がっている一方で、業務効率化の段階から新たな価値創出やビジネス変革へと発展させることが今後の重要な課題であることが示された、とされています。

令和8年版情報通信白書でも、日本企業が生成AIの活用により生じうる影響として挙げた回答は「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も高く、「製品・サービスの質の向上」(32.2%)を大きく上回りました。同じ設問で「人材不足の解消」は26.8%でした。他の3か国では「質の向上」が最も高くなっています。

測る項目が時間だけになっていると、この差がそのまま自社の状態になります。品質・待ち時間・管理の手間を並べて測るのは、効率化の次を見るためです。

出典

よくあるご質問

改善前のデータがない場合はどうしますか

2週間だけ、改善前の状態で記録を取ります。過去にさかのぼって推計すると、都合のよい数字になりやすく、後で判断の根拠になりません。2週間の記録が取れない業務は、そもそも頻度が低く、改善の優先順位が下がります。

指標が改善しないときはどう考えますか

先に、指標の定義が測りたいものと合っているかを確認します。次に、改善の対象が本当のボトルネックだったかを見ます。多いのは、作業時間を減らしたのに待ち時間が変わらず、全体の所要日数が動かない場合です。

測定はいつまで続けますか

判断が終われば止めて構いません。続ける必要があるのは、悪化を検知したい指標だけです。すべての指標を測り続けると、測定そのものが業務になり、改善の効果を打ち消します。

KPIはいくつ設定すればよいですか

1つの業務につき4つです。測るのは時間・品質・待ち・ミスの4つだけです。指標を5つ、6つと増やすと1件あたりの記入が1分を超え、数日で書かれなくなります。測る対象を広げたいときも、業務を同時に増やさず、1つ終えてから次の業務へ移します。4つに絞るのは、記録が続く量に収めるためです。

今週着手するなら、対象業務を1つ決め、記録票の8列を用意するところまでです。改善案を考えるのは、2週間測った後で構いません。全体の進め方は中小企業のDXは何から始める?で扱っています。

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編集者K

技術確認: 編集者K/ 最終更新: 2026.09.06